マンション敷地内公園の複合遊具が傾いているとの相談を受けました。
10度から13度も傾いているとのことです。
「遊具の傾きと危険性」に関する公的文書としては、国土交通省が平成20年8月に発表した「都市公園における遊具の安全確保に関する指針(改訂版)」の中で触れています。
遊具の維持管理に係わる説明の頁で、■参考(日常点検の着眼点の例)として、「傾き」も遊具の異常のひとつと扱われています。
この指針は、平成14年に発表された指針の改訂版ですが、初版発表後の平成16年4月には、国土交通省住宅局を通じて、マンション敷地内の遊具の安全確保を呼びかけるために、マンション管理組合へ周知するよう通達を出しています。
初版の時点で「傾き」について触れられているので、マンション管理組合は、本来なら知っているべき事項となります。
但し、国交省指針には「何度以上傾いたら危険」などの記述がなく、また、どのような危険があるかなどの具体的な記述が残念ながらありません。
これは、遊具の形状により許されるであろう傾きの限度や、それに伴う危険の種類が異なるためです。
支柱が多数あるジャングルジムなどは、多少の傾きがあっても倒壊の恐れは少ないです。
まれに1本柱から梁が両側に2本出ているブランコがありますが、このようなタイプは倒壊の恐れがあると考えたほうが良いでしょう。
危険な傾きになっているかどうかは、実際に点検してみなければ判断しかねます。
ところで傾きは、いつ起きたのでしょうか。
新設時に傾いて据え付けたのか、経年変化で傾いてしまったのか、ということです。
まず、遊具を新しく設置する時に、傾けて設置することは、ほとんどあり得ません。
施工業者は垂直水平を必ず守ります。
また、完成時の竣工検査で垂直水平を確認します。
10~13度の傾きともなれば、専門家でなくとも誰しも気付くはずです。
おそらく経年変化で傾いたことでしょう。
傾きによる危険性は、遊具が傾いた原因によっても異なります。
遊具全体が変形せず、回転するように傾いている場合は、基礎が不同沈下しています。

この場合、遊具に無理な力が掛かっている可能性が高いため、部品と部品の接合部やボルト周りにヒビや亀裂が生じやすくなります。
使用しているうちに思わぬ箇所が折れたり割れたりする可能性があります。
基礎コンクリートを削って、遊具を基礎から一度、離脱させて、水平にしてから、再度、基礎と付着させるなどの、大掛かりな方法で修繕することになります。
他の傾き方としては、柱が傾いて遊具全体がひしゃげるように、平行四辺形状に傾く場合があります。

これは、接合部の緩みが原因です。
このような場合には、力を込めて遊具全体を押したり引いたりしてみると、揺れたりきしんだりします。
このまま使用し続ければ、倒壊の危険があります。
接合部ボルトの締め直しや、部品交換による修繕をすべきです。
まれに、移設などによって、遊具の変形や傾きが生じる場合があります。
学校の統廃合などに伴う遊具の移設工事で、クレーンで吊り上げるときに、自重に耐えきれずに変形することがあります。
ところで、日本建築学会から出版されている「小規模建築物基礎設計の手引き」では、木造建築物の不同沈下障害について、以下のように定めています。
傾斜1/1000:モルタル外壁・コンクリート犬走りに亀裂が発生する。
傾斜3/1000:つか立て床の不陸を生じ、布基礎・土間コンクリートに亀裂が入る。
傾斜5/1000:壁と柱の間に隙間が生じ、壁やタイルに亀裂が入る。窓・額縁や出入口枠の接合部に隙間が生じ、犬走りやブロック塀など外部構造に被害が生じる。
傾斜10/1000:柱が傾き、建具の開閉が不良となる。床が傾斜して支障を生じる。
傾斜15/1000:柱の傾斜が著しく倒壊の危険がある。床の傾斜もひどく使用困難である。
本来、健全な生活のために床、壁、天井などの水平垂直が守られていなければならない建物の観点からは、傾斜15/1000になると「使用困難」と判断します。
傾斜15/1000とは、わずか0.86度の傾きです。
遊具は住居でないとは言え、利用者である子どもたちにとっては生活空間の一部ですから、倒壊しないまでも、健全に保たれるべき施設です。
10~13度の傾きは、異常事態です。
遊具の床板が10度以上も傾いているとなると、利用時に思わぬ転倒を招きます。
「遊具の傾き」は、利用上の危険を伴うと同時に、倒壊へ向かう注意信号と見なして下さい。
強風や地震、集中豪雨などで急激に状況が悪化する場合があります。
早期の修繕をお奨めします。